No.6 現代アートとダブルファンタジー
2021.01.11
現代アートはマルセル・デュシャン(1887年~1968年)に始まると言われますが、定義は難しく、先の大戦の後の美術(Contemporary Art)であり、現在の作品はみな現代アートと評されるかもしれません。日本で最も活躍している現代アーティストの6人の美術展「STARS:現代美術のスターたち―日本から世界へ」が森美術館で開催されました。村上隆、李禹煥、草間彌生、宮島達男、奈良美智、杉本博司の有名な作品と最新作が展示されたこの企画展を2020年12月28日に訪ねました。
美とリベラルアーツにほかならないと、最も興味深く印象に残ったのが、杉本博司の映画作品の《時間のひとりごと》です。小田原文化財団が2017年に杉本と開館した江之浦測候所の四季の姿と、日本と世界の古代からの時間(歴史)と空間が映し出されています。
同じ日に「ダブル・ファタジー – ジョン&ヨーコ」(ソニーミュージック六本木ミュージアム)を観ました。特にジョンのギブソンのJ160Eアコースティック・ギター(ジョンとヨーコが《ギブ・ピース・ア・チャンス》を歌うシーンと「ベッド・イン」の映像で見られます)やジョンの「New York City」Tシャツ、『ダブル・ファタジー』のレコーディングで使用したボディがない「サードニクスのギター」などに惹かれました。
オノ・ヨーコは現代アーティストで、2人の出会いはヨーコの個展です。美術学校で学んだジョンのイラストも上手く、ジョンは音楽家であり、現代アーティストの一面もあります。 「いいか、もし俺とヨーコの身に何か起きたら、それは偶然ではない」(1972年)とは反戦運動で連邦捜査局に監視されていた二人の身の危険を示唆するものでしょうが、自らの死をも偶然ではないと言うのでしょうか。
「ジョンの死はすなわち、ある戦いの犠牲だったのだと思っています。それは正気と狂気との戦いです。ジョンは生涯を通じて、私たちが内に抱える狂気と、そして世界にはびこる狂気と戦っていました。皮肉にも彼は、精神的にも健全な時期を満喫しているときに狂気の行為によって命を絶たれました」(ヨーコ、1981年12月8日。ジョンとヨーコの引用文は同展の公式図録によります)
ジョンとヨーコの音楽と美術、生き方は正気と狂気の間で大きく揺れ、世界の正気と狂気に強く注意を促したのだと思います。